サイレントセールスブログ

Aヨミ、Bヨミ、Cヨミの話

かつて私がリクルートで営業をやっていたときの話。

毎週月曜日の朝は、ミーティングがあった。

その週の予定をみんなで報告しあう場だ。

いわゆる「ヨミ会」と呼ばれていた。

訪問予定の会社名とそこでの受注確度を報告する。

確度というのは、注文が入る確率だ。

お客さまとのやり取りの状況や
自分の尺度でヨミの度合いを決める。

ほぼ注文が入る予定のときはAヨミ。

50%くらいの確率ならBヨミ。

そしてゼロではないが20%くらいの場合はCヨミ。

こんな感じで自己申告をする。

ようするに、今週どれくらいの売上が見込めるかということだ。

私はこのヨミ会が大嫌いだった。

前の週にサボっていたりすると、
翌週の予定がスカスカなことがある。

アポが入っていないと報告するものがない。

すると当然、上司から詰められる。

それがわかっているので、
約束は取れていないが
飛び込みで訪問する予定の会社名を記入しておく。

もちろん、ヨミなんてわかるはずがない。

そこで、適当に、Bヨミとか入れる。

体裁をつくろっているわけだ。

しかしそんなことは上司に簡単に見透かされてしまう。

ちょっと確認すれば、
これはウソだなとすぐにバレる。

で、さらに追及が厳しくなるというわけだ。

まあこのヨミ会というのは、
営業マンを追いつめてやる気を出させることが、
本来の目的ではない。

正確な売上予定を全社的に把握して、
年間の販促スケジュールに反映させるためのものだ。

だからごまかして申告するのはダメなのである。

そうは言っても、
まわりの同僚たちの手前もあって、
自分だけ白紙の報告はしたくない。

どうしても水増ししたくなる。

とくに売れていないときはなおさらだ。

ということで、
私にとっては良い思い出ではないヨミ会だが、
今になってみれば素晴らしい仕組みだと感じる。

で、ここからが本題。

多くの営業マンは、ノルマや目標を持っている。

それは売上金額の場合がほとんどだ。

すると、目の前のお客さまに売れるかどうかに焦点がいく。

売れるか売れないか、
ふたつにひとつ。

0か100か。

そんな感覚になる。

なので、100を求めて突き進む。

そして、0になるとわかると、
あっさり切り捨てる。

よく、売れないとわかったとたんに、
手のひらを反すように態度が変わる営業マンがいるだろう。

0の客に用はない、ということなのだ。

しかし、たとえ今、売れなかったとしても、
この先、ずっと売れないとは限らない。

お客さまのニーズなんて、
ある日突然出てくることもある。

そうであるにも関わらず、
目先の売上ばかりを追いかけていると、
未来のニーズを取りこぼすことになる。

そこで、おススメしたいのが、
ランク別のヨミである。

リクルートと同じように、ABCにしてもいい。

たとえば、Cヨミ。

いますぐ売れそうもないけど、
そのうち売れる可能性もあるお客さまだから、
継続してお付き合いしておこう。

そう、0か100かの世界だと、
付き合いを止めてしまっているお客さまでも、
(言葉は悪いが)キープしておくということだ。

すぐには売れないとわかっていれば、
ごり押しすることもなくなる。

ずっと付き合いを続けたいと思えば、
ムリを言って困らせたりもしなくなる。

いつでも訪問できる関係性を作っておこうとするだろう。

売れている営業マンを見ていると、
間違いなくこのCヨミのお客さまをたくさん抱えている。

Cヨミなので売上を期待していない。

なので、会っても売ろうとしない。

仕事の話すらしない。

でも、近くに寄ったついでに訪問すると、
やさしく受け入れてくれる。

暑い日などは、冷たいお茶を出してくれる。

そんなお客さまをどれだけ持っているか?

いわゆるルートセールスのお客さまというのも、
このCヨミに近いものがある。

毎日売れるわけではないが、
定期的に訪問して様子をうかがっている。

このときに、どういう態度で行っているか?

毎回行くたびに、

「なにか注文はありませんか?」

と言ってはいないか?

Cヨミの相手に「売り」の匂いを出すと、
避けられてしまう。

付き合いのある営業マンを嫌っているわけではないが、
毎回「断らなければいけない」と思うと、
応対するのがおっくうになる。

さっさと帰ってほしいので、
忙しいフリをする。

お茶も出さない。

だからCヨミの相手には「売りのスイッチ」をオフにする。

そして一緒にいる時間を増やすのだ。

座ってお茶を飲む。

そこでの雑談から仕事の芽が生まれてくる。

そのお客さまに売れなくても紹介してくれる可能性もある。

その意味で、リクルートでのヨミ会は有効だった。

明らかに売れるAヨミだけに焦点を当てるのではなく、
Bヨミ、Cヨミも表に出すことによって、
つねに意識をすることになる。

それがいい。

Cヨミをバカにしてはいけない。

Cヨミをどんどん増やそう。

最後に営業マンを助けてくれるのは、その人たちなのだから。