お客さまの心理を読むための唯一の方法とは、
お客さまに本音で語ってもらうようにすることである。
という前々回の続きから。
と、その前に、
前回の思いつきで書いた内容が、結構好評だった。
いわばアドリブなのだが、
これは文章だけでなくセミナーなどでも有効だ。
予定通りの内容よりも、
その場に合わせて話を変えると相手は聞いてくれやすい。
そのときに大事なのは、
自分が話したいことがあるから変えるのではなく、
変えたほうがより相手のためになると判断することだ。
どんなに面白い話だったとしても、
独りよがりのものだったら聞いてはくれない。
ということで、今度は本当に前々回の続き。
つねに私が意識しているのは、
営業マンが当たり前だと思っているような、
いわば営業の常識に疑問を持つことである。
そもそも常識というのは、
それを行うのが普通になっているので、
あらためて疑問を持ったりはしないものだ。
だからこそそこに落とし穴がある。
たとえば、
「お客さまは営業マンにウソをつくものだ。
だからお客さまの言葉をうのみにしてはいけない」
これは、多くの営業マンが思っていることである。
ニーズがあるかどうかを聞いて、
相手が「ない」と答えても、
それは本音ではないから、
もっと、しつこく粘れば売れる。
そう思っている。
だから、お客さまが「NO」と言っても引き下がらない。
営業マンが頑張るのはここだと言わんばかりに、
断られても食い下がる。
もっと言うと、
それこそが営業マンの仕事だと思っているふしがある。
上司もそれを奨励(強要)する。
営業マンは断られてからが勝負だ、とか、
切り返しトークなどというのもその類である。
会社のみんながそう思っている。
お客さまはウソをつくものだと。
いつも会話をするときには、
疑いの気持ちでいる。
決してだまされないぞと警戒している。
そしてスキあらば攻めに転じる。
どうだろう?
いつもそんな営業をしていないだろうか?
そんなこと言ったって、
それが事実だからしょうがないじゃないか!
そんな声も聞こえてきそうだ。
成績をあげるためには、
お客さまとのだまし合いも仕方がない。
そうあきらめている人が多い。
だからこそ、
相手の心理を読むことに意識が向いてしまうのだ。
お客さまは本音を言わないというのが、
大前提になっていて、
それをもとに営業トークが作られている。
そして切り返しトークの練習に明け暮れる。
そんな営業は、疲れるだろう。
そして、当然ながら信頼関係を結ぶとはほど遠い。
なぜ、お客さまはウソをつくのか?
なぜ、お客さまはすぐに断るのか?
なぜ、お客さまは本音を言わないのか?
それをあらためて考えてみよう。
そもそも、相手が誰であれ、
人に対してウソをつくというのは、
気持ちのいいものではない。
罪悪感も生まれる。
そう、営業マンに対してウソをつくというのは、
やりたくてそうしているわけではないのだ。
できればウソなどつきたくない。
でもウソをつかざるを得ない。
お客さまをそんな状況に追い込んでいるのは、
営業マン自身である。
営業マンの売り込みが強すぎるので、
お客さまは避けようとする。
それがウソにつながっている。
つまり、
営業マンがお客さまにウソをつかせているというのが真相なのだ。
お客さまは本音を言わないというのは、
営業マンがそう仕向けているのである。
そう考えると、
お客さまがウソをつくというのは、
営業の常識などではないということだ。
そこに気づいて対処しないと、
いつまで経ってもお客さまの心の中など見えてこない。
どうだろうか。
これからも相手と腹の探り合いをする営業スタイルでいきたいか、
それとも、相手と本音で話し合えるスタイルにしたいか。
相手の「NO」をひっくり返すのが、
営業の醍醐味だなどと言っている人がいるが、
それは営業マンの勝手な自己満足である。
そうやって営業をやる気にさせようとする、
会社(上司)の詭弁にすぎない。
そんなことに付き合わされるお客さまは、
より一層警戒心を強くする。
営業マンなんて信じられないという思考になるのは、
当たり前だ。
それはお客さまにとっても、
まっとうな営業をしようとしている人にとっても、
大迷惑なことなのである。
でももう引き返すことはできない。
ガンガンに営業されまくってきたお客さまは、
どんな営業にも警戒心を持っている。
警戒しないとどんどん売り込まれてしまう。
だから自己防衛のために、
本音を隠そうとするのは、仕方がないのである。
そして、これからの営業マンは、
そうしたお客さまを前提にして仕事をしなくてはならない。
そもそもお客さまは警戒しているものなのだ。
その警戒心を解かなければ、
まっとうな営業ができない。
売れている人ほど、この発想にたどり着いている。
つづく。