相手にベクトルを向けるようになると、
営業にとって有利になることがたくさん出てくる。
まず、一方的にしゃべってしまうという弊害を避けられる。
自分にベクトルが向いていると、
どうしても自分の言葉やしぐさに視点が行く。
結果として、ひとりでずっとしゃべっている時間が増えてしまう。
経験している人も多いと思うが、
営業である自分がしゃべっていて、
途中で相手がそれを聞いてないと感じていても、
どうしても止められないことがある。
一方的にしゃべることの不自然さを感じつつ、
説明を途中で切ることができないのだ。
それで売れたためしはない。
次に、相手を観察できるという利点がある。
これは、前回のメルマガでもお話ししたが、
相手の言葉や動作などを観察することで、
会話がスムーズに盛り上がる。
その盛り上がり方も、
自分の話で盛り上げるのではなく、
相手(お客さま)の話が中心になるので、
相手にとって気持ちのいい会話になる。
とくにアイスブレイクなどの雑談をするときには有効だ。
まだ営業を警戒していたり、
心を開いていないお客さまに対して、
相手にしゃべらせる会話は絶対的な効果がある。
その話題を拾うためには、
相手を冷静に観察できる目が必要になる。
そうすることで、スムーズに仕事の話に移行できるのだ。
大事なキーワードを聞き逃さない。
お客さまはときどきとても重要なことを言ったりしている。
雑談をしながらとか、
ちょっとした会話の中にそれは入ってくる。
しかし、それを営業マンがきちんとすくい取れていない場面も多々ある。
たとえば、こんなことがないだろうか?
お客さまと会話をしながら、ふとボーっとしている瞬間。
相手の話を聞きながら、つい別のことを考えているとき。
目の前の人の話に意識が向いていないときというのは、
自分にベクトルが向いているときでもある。
話の最中に、
「このあとどんな質問をしようかな?」
「そういえば、例の件はどうなったんだっけ?」
「次の時間が迫っているから、早めに切り上げないと」
などと頭のなかで考えていると、
人の話が上の空になる。
するとどうなるか?
お客さまは気づいている。
目の前の営業マンが自分の話に集中していないことに。
「この営業マンは、うわべだけで話をする人なんだな」
そう思われて信頼度が下がってしまう。
そしてもうひとつ。
お客さまがとても重要なことを言ったことに気づかない。
「来年の3月までには決めたいなあ」
「ホントは、金額よりも機能を重視したいんだよね」
「また故障したらいやだなあ」
このような独り言に近いセリフというのは、
営業にとっては大きなヒントになるし、
ときには、クロージングの決め手となったりする。
それを聞き逃してしまうのは、大きなマイナスだ。
きちんと聞いていると、
その相手の言葉を使ったトークが生きてくる。
「先ほどおっしゃっていましたが・・・」
「〇〇ということでしたので・・・」
など、言葉に説得力を持たせられるのと同時に、
あなたの言うことをきちんと聞いていましたよという、
信頼度アップにもつながってくる。
上手なしゃべりなどよりも、
相手の言葉をきちんと聞く姿勢を見せたほうが、
営業としては有効なのだ。
そのためにも、相手の言葉に集中したい。
たとえ、仕事と関係ない雑談をしているときも、
その雑談に集中すること。
売れている営業マンを見ていると、
この集中度が違うのだ。
雑談でも全身で会話を楽しんでいるのがわかる。
それを見せられるとお客さまは、
警戒心を解いてリラックスしてくる。
売れている人がなぜ売れるのか?
それは、最初の雑談だけ見てもわかるのだ。
人はしゃべるほどにリラックスする。
そして、自分の話をきちんと聞いてくれる相手を信頼する。
その状態が理想の商談になるのである。
しゃべらない営業のポイントは、まだある。
それはどんな営業マンでも同じ効果を出せる点だ。
つづく