これまで、営業マンはしゃべるなとか、
営業にしゃべりのうまさは関係ないなどと言ってきた。
それは、ヘタなしゃべりを推奨するということではない。
もともとうまくしゃべれる人はそれでいい。
ただ、本当にうまい人などは一握りだ。
その他の人が、営業成績をあげることを目的として、
しゃべりの練習に時間を使うことはないというのが、
私の言いたいことである。
「これはとっても便利ですよ!」
と相手に伝えたいとする。
しゃべりのうまい人なら、わかりやすく説明できるかもしれない。
しかし、うまい人と同じことをヘタな人が再現できるかというと、
それはムリに近いだろう。
しゃべることというのは、
単に同じ言葉を口から発すればいいものではない。
スピードやトーン、間、抑揚、声質など、
いろんな要素が組み合わさっている。
その違いがウマい・ヘタとなり、
個性になる。
また、仮に同じようにしゃべれるようになったとする。
でも同じしゃべりができるのは、その覚えたセリフだけの話で、
その他の会話では、どうしても違いが出てしまう。
すると、その人の個性が出るしゃべりと、
そうでない部分が混在することになる。
営業というのは、お客さまとの会話で成り立っているものだ。
そのときに、相手に違和感を与えてしまうのはマイナスになる。
しゃべりの練習をすればするほど、それは顕著になってくる。
なので、営業マンはしゃべりの練習をするよりも、
もっとほかのことに時間を使うべきだというのが私の持論だ。
では、ほかのこととはどんなことなのか?
それは言葉を使わなくても相手に伝わる方法だ。
言葉に頼らずに「とっても便利だ」ということをどう伝えるか。
それをカタチにするのである。
言葉にはあいまいなものが多い。
「便利だ」
「すごい」
「きれい」
「おいしい」
「使いやすい」
など、どれも発言する人物によって、
伝わる度合いが左右されるものばかりだ。
その点でも、言葉ばかりを真似しても、
同じ成果は出てこないという理由になっている。
だからこそ、誰でも同じように相手に伝わるモノが必要なのだ。
それは、資料やデータ、記事など。
見せるだけで正確に伝わる営業ツールのことである。
「この商品はとっても便利だ」と口で言うのではなく、
「この商品の特徴はこうです」と言って、
便利さが客観的に伝わる資料を見せる。
これなら、どんなに口下手な人でも伝えることが可能だ。
すべてを言葉で説明しようとするのではなく、
資料やデータに変換して伝えるようにしよう。
そのためにこそ時間を使おう。
そもそも営業マンの言葉の信頼度は、決して高くない。
営業の言っていることだから、
話半分に聞いておこうなどと思われたりしている。
いくら営業マンが「お勧めです!」などと力説しても、
信頼性のない言葉には、説得力がない。
それよりも、信頼できる資料を黙って見せたほうが、
圧倒的に納得してくれる。
これが、しゃべらない営業の3つ目のポイントである。
説得力のある資料があれば、
どんな営業マンでも一定の情報をお客さまに伝えることができる。
使い回しもできるので、
営業部全体の底上げもできる。
もちろん、そう簡単に効果的な資料などできないだろうが、
しゃべりの練習時間を資料作成にあてることは可能だ。
うまくしゃべれる人もうまくしゃべれない人も
同じ成果を出せるようになれば、
全体の売上はどんどん上がっていくだろう。
つづく