前回の続きから
イヤイヤやっていた営業も、
やめてみると意外と役に立つことがわかった。
コピーライターとして仕事をしていると、
自分の仕事以外のことも頼まれたりする。
たとえば、
「レイアウトもできる?」とか「印刷も頼める?」など、
ついでに別のことも依頼されることがあるのだ。
そんなとき私は、どんどん受けていた。
一手間をかければできたり、
別の人に依頼するだけで良かったりするので、
可能な範囲なら受けるようにしていたのだ。
それに、せっかくの依頼なので断りたくないという気持ちもあった。
思えば、この思考は、まさに営業そのものだった。
なんとかお客さまの期待に応えたい。
お客さまが困っているなら助けたい。
そんな思考である。
私の中ではそれは当たり前のことだと思っていた。
ところがそうではなかったのだ。
客先で打ち合わせをしているときなど、
たまに他の業者が売り込みに来たりする。
イラストレーターが作品集を持って来ていたり、
カメラマンやデザイナー、
もちろんコピーライターもやってくる。
彼らが一生懸命に自己PRをしているところを、
近くで見ていることも多かったのだ。
で、そのときいつも思ったのが、
「もっとうまくやればいいのになあ~、みんなヘタだなあ」
というもの。
いや、なにも偉そうにしているわけではない。
私だってまだその頃は新人のライターだったりするわけで、
来ている彼らのほうが大先輩のことが多いのだ。
それでも私の目には、彼らの営業がヘタだと映っていた。
そして同時に「惜しいなあ」とも思った。
せっかくいい腕を持っているのに、
それをうまく伝えることができないだけで、
仕事になっていない。
たまに仕事になったとしても、
安く使われてしまっている。
もったいないなあと、隣で見ながら思っていた。
まず、イラストレーターにありがちなこと。
自身の作品集のファイルを持って来て、
それを相手に見せる人がとても多い。
良くないのは、
ひとつのファイルに自分のいろんな作品を混ぜこぜにしているところだ。
もちろん、作品のひとつひとつはとても高いレベルだったりするが、
いろんなタッチや画風のものが次々と出てくる。
担当者はファイルをめくりながら、
こう思っている。
「この人の得意分野はなんだろう?」
イラストというのは、うまいだけの人には頼みづらいものだ。
あるポスターを手掛けるときに、
ハードボイルドなタッチのイラストを使いたいと思ったら、
それが得意なイラストレーターを思い浮かべて依頼する。
何でも書ける人よりは、その分野が得意な人に仕事が行くのだ。
なので、作品集を持って行くときには、
自分の売りたいジャンルのものだけを集めて
ファイルにするのがベストである。
いろんなタッチを持っているというのは、
売りにならない。
それは、一度お客さまと付き合いができてから、
「じつはこんなのも描けるんです」
という感じで見せていくのがベストだろう。
これって営業の場面でも同じことが言える。
何でもできますというよりは、
これが得意ですという見せ方のほうが、
声がかかりやすいというものだ。
じつは、このメルマガ、
もともとのタイトルが何だったのか知っている人は、
結構なツウだ。
最初のタイトルは、
『営業のカンセツワザ』というもの。
営業のズバリのテクニックというよりは、
間接的にじんわりと効くようなコンテンツにしたいと思ったのだ。
しかも当初のターゲットは、
フリークリエイターとしている。
ずばりの営業マンではなく、
フリーで仕事をしている人のために、
営業のノウハウを伝えるものだった。
先ほどのイラストレーターのような人を見るにつけ、
そんな人に少しでも営業力をつけてもらいたいと思ったからである。
もちろん、それはクリエイターだけではなく、
社労士などの士業の人にも使えるし、
一般の営業専門職の人にも有効なものだ。
え~と、話がそれた。
要するに、営業力というのは、誰でも身に付けておいて損はないし、
むしろ、必要不可欠なものだということだ。
クリエイターや資格を取って仕事をしようとしている人は、
営業をやりたくないと思っている人が少なからずいる。
私もそのくちだ。
でも、だからといって、まったく営業しないで済むかというと
そんなこともない。
はっきり言って、どんな職業でも営業力が必要になっている。
それは売るだけの能力ではなく、
人から信頼される能力だ。
フリーだろうが、組織に所属していようが、
仕事をしてお金を稼ぐということは、
誰かに何かを提供していることになる。
つまりそこには人付き合いが発生する。
私が言うところの営業力とはまさにそこだ。
営業力を持っていると仕事も変わるし人生も変わる。
さて、そろそろ本題になってきたが、あと一回だけつづく。