サイレントセールスブログ

営業するほど顧客が減る話

先日、友人と飲んでいるときにこんな話が出た。

彼の事務所が引っ越しをしたそうで、
その際に、取引銀行も変えたとのこと。

まあ、銀行は近場にあったほうが便利なので、
それを変えるのは普通のことだ。

そうして新しい口座ができるとすぐに、
売り込みが入った。

「ネットバンキングを作りませんか?」

たいての銀行は、個人口座なら無料だが、
法人口座の場合は月々に手数料がかかる。

だから彼は断った。

しばらくすると、営業から電話がきた。

それがまたネットバンキング開設の売り込みだったのだ。

彼は、以前に断ったので、不要だと告げると、
それでも電話口でしつこく説明してきたらしい。

おそらく、新規開設した顧客には、
営業をかけるという会社側の方針があるのだろう。

そして、まだ開設していない会社を狙い撃つ。

友人としては、近所に銀行の店舗があるので、
必要なときには行けばいい。

なにも、手数料を支払ってまで、
ネットで銀行手続きをしなくてもいいと思っていた。

だから、本当に不要なのである。

ところが、しばらくすると他の営業マンから、
また同様の電話がかかってきた。

どうやら顧客情報を共有されていないらしい。

とにかく営業をしかければ売れると思っている。

かつて私がいたころのリクルートも似たようなことをやっていた。

同じお客さまにいろんな営業マンから電話が行く。

しかも、リクルート販売とかリクルート企画のような、
販売会社からも電話が行くので、
お客さまはうんざりしていた。

本当に怒らせてしまい、
リクルートは一切出入り禁止になったところもある。

さすがにその情報は共有していた。

○○社は営業禁止という感じで。

さて、再三営業されたその友人はどうしたかというと、
黙ってその銀行を解約した。

営業がうるさすぎたというのはもちろんだが、
顧客のことを大事にしない金融機関を信用できないと思ったからだ。

営業をすれば売れると思ったら大間違い。

この例のように営業するほど顧客が減ることも大いにある。

とくに近年だが、
営業マンに無茶な営業を強いる会社が目につく。

目に余ると言ってもいいくらいだ。

これまでは窓口業務をやっていればよかったのに、
同時に営業もやれと言われたり。

いままでやったこともない飛び込み営業を強いられたり。

売れないと「気合いが足りない」と言われたり。

先日も、どことは言わないが、
全国的に知らない人はいないレベルの会社で、
普段の窓口業務をやりながら、
保険や信託などの商品を売らなければいけないという話を聞いた。

そもそも別の用事で窓口に来ている人に、
営業をかけようとすること自体、無理がある。

しかも、専門の営業マンでさえ簡単には売れないような
保険などの金融商品を片手間で売れということだ。

窓口なので、うしろに次の人が並んでいることもある。

悠長に保険の説明などしていたら怒られるだろうし、
説明を受けている人もうしろを気にして真剣に聞けるわけがない。

そんな状況で営業できると本当に考えているのだろうか?

それを続けてしまうと、
おそらく顧客を失うことになる。

行くたびにうるさく営業している店など行きたくない。

ガンガン営業して業績を伸ばせばいいと考えたら大間違いだ。

その裏で失うことになる「売上」や「顧客」の大きさ。

さらには失った「信用」は簡単に取り返せない。

業績の低迷によって販路を広げなくてはいけない企業。

これまでやってきた営業では通用しなくなった会社。

新しい道を模索しようとするのは間違いではない。

しかし、営業活動を増やしたり、販路を広げようとしたり、
取扱い商品を増やしたりすることで解決しようとするのは、
あまりにも安易である。

なによりも既存客がないがしろにされていることが多い。

営業の手を拡げようとすると、
既存客まで離れていく。

営業マンはどんどん困難を強いられる。

複雑化している営業を自分で考えてやれというのは無理がある。

私が最近思っているのは、
営業の分業化である。

なんでもかんでも一人の営業マンにやらせるよりも、
業務を分けたほうが効率がよい。

その話は次回にまわすが、
とにかく、営業すれば売上が伸びるという単純なものではない。

やり方によっては逆に自分の足を引っ張ることにもなる。

もっとシンプルに、
そして確実に売れる営業手法を広めなくてはいけない。

そんな気持ちが強くなる昨今だ。