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定年になったら何をする?

最近、連続でこんな質問を受けた。

「定年後が不安でどうすればいいですか?」

私は別にそのジャンルの専門でもないのだが、
そんな内容の本を書いてほしいと言われたりもする。

たしかに、会社勤めが終わったら、
その先どうするかで悩む人は多いだろう。

それまでは仕事をするという「やること」があった。

一日の大半をそれをやって過ごしていた。

それがある日無くなってしまったら、
たしかに途方に暮れるかもしれない。

趣味があればいいのだが、
誰もがやりたいことを持っているわけもない。

かといって、無理に趣味を探すというのも、
なんだか違うような気がする。

私の父親が定年退職したときのことを思い出す。

それまで忙しく仕事をしていたので、
念願の家でゴロゴロを満喫していた。

しばらくすると母親がイライラしはじめた。

ことあるごとにどこかに出かけるように促していた。

でも、父は私と似ていてあまり人づきあいが好きではない。

友だちと遊ぶようなこともほとんどない。

それよりも家族といることが好きなタイプだった。

もちろん何もしなくても年金が入ってくるし、
それは、もちろん長く働いていたからこそのものだ。

これまでは工場長として、
やりがいもあった仕事だった。

多くの社員や取引先などからも「必要」とされていた。

自分がいなくなったあとの会社の心配もしていた。

しかし、しばらくして、

「俺がいなくても会社はまわるものなんだな」

と、ポツリと言っていたのが印象に残っている。

その言い方が寂しそうだったのだ。

それまで山積みになっていたお中元なども、
パッタリと来なくなった。

それを見て、私も寂しい気持ちになった。

その後、陶芸教室に通ったり、
グランドゴルフを始めたり、
母に連れられて旅行に行ったりもしていたが、
やはり家にいるときが一番心地よさそうだった。

どんなに「やること」を探しても、
それで心は満たされない。

趣味を探す、習い事のために教室に行く。

最初はそれでもいいだろう。

ただそれだけではなくて、その先を考えたほうがいい。

それは主役になるということ。

どんな分野でもいいし、
小さなコミュニティでも構わない。

そのなかで主役になることを意識することをおススメする。

いやべつに、既存のグループに割り込んで、
トップの地位を勝ち取れというのではない。

自分でコミュニティを作るのだ。

言い出しっぺになる。

自ら旗を掲げてみること。

それが、満たされない心を解消してくれると考えている。

いまはSNSなどで個人が気軽に情報発信できる時代だ。

・地元の美味しい店を探索する会

・猫を飼っている人の集まり

・一緒に趣味をやる会

など、自分と同じような嗜好を持っている人に声をかけて、
集まってみてはどうだろう。

最初は2人だけでも構わない。

それにリーダーシップなども不要だ。

ただ、あなたが何かを切り出すことが重要なのである。

人はどんなときに満足感をおぼえるか?

私は、人に認めてもらったときだと思っている。

会社に勤めていれば、
自然に必要な人間になれていた。

上司や部下から少しでも認められていたはずである。

それが当たり前だった。

しかし会社を辞めるとその当たり前のことが無くなってしまう。

自分が作ったもの。

自分が考えたこと。

自分が言った言葉。

そこに誰かが共感してくれたときに心が満たされる。

でもそれを自分から発信しなければ、
誰も気づいてくれない。

定年退職したら、どうやって時間をつぶそうか?

そんなことは考えなくていい。

ひとりからでもいいので、自分を認めてもらうこと。

そのためには何をすればいいのかを考える。

最初はひとりだけだったのに、

だんだん人が増えてきて、

気づいたら大きな集まりになっていて、

そんなことがゆくゆくはビジネスにつながったりもする。

ちなみに賃金をもらうということも、
人から認められた証である。

誰かが用意してくれた「やりがい」を探していたら、
いつまでも心は満たされないままだ。

自分は何を発信できるのだろうか。

そんなことを考えながら定年を迎えよう。