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我流!本の書き方

高校生のときに、太宰治の「人間失格」を読んで、こう思った。

「こんな文章が書けたら気持ちいいだろうなあ」

小説の内容に感銘を受けたのだが、
それ以上に、書き手の心情を想像していたのだ。

もちろん、当時の彼が気持ちよく書いていたかなどは知らない。

でも、なぜか気持ちよさそうに思ってしまった。

そして、自分もこんな文章を書きたいと素直に思った。

もちろん小説家になりたいなどと大それたことは考えていない。

ただ漠然と心の中にあったのだ。

その証拠に、実家に帰って私が読んでいた本棚を見ると、
小説や文章の書き方的な本がたくさんあった。

当時から興味があったようだ。

高校生の頃の私の唯一の趣味はギターだった。

サイモン&ガーファンクルからはじまり、
ビートルズを経て吉田拓郎に至るまで。

レコードをコピーするのが好きだった。

学校から家に帰るとずっと部屋で練習する毎日。

でも、バンドを組むとか人に聴かせることは考えていない。

できなかったことが練習してできることだけに満足感を覚えていた。

そして、レッドツェッペリンのジミーペイジが、
もとスタジオミュージシャンだったと知って、
私もそれになりたいと思った。

ステージに立たずにギターが弾ける仕事。

そんなことを考えていた時期もあった。

さて、本の話。

私はこれまでに27冊の本を書いてきたが、
よく聞かれるのが「どうやって書いてるの?」というもの。

自分の中で決まった書き方というのはないのだが、
ある程度は、自分なりの型がある。

まず、どうやって新しい本を書こうと考えるのか。

つまり企画の段階。

これは、常に意識をしてアンテナを張っている。

人と打ち合わせをしているときや飲み会での席などでも、
私は無意識にテーマを探していることがある。

たとえば、いま書いているのは、営業の教え方の本だ。

これは、一昨日のセミナーでやったことだが、
営業リーダーが部下をどうやって教えるかについて解説するもの。

きっかけは単純である。

ある研修エージェントとお茶を飲んでいたときに、

「最近、営業の幹部の人が悩んでるみたいです」

というところから生まれたものだ。

実際に私はいま営業を教える仕事をしている。

この教え方自体を解説する本というのはどうだろう、と。

で、次の段階は市場調査だ。

どんなにいい企画を思いついたとしても、
二番煎じでは意味がない。

アマゾンで「営業 教育」などで検索してみる。

すると意外にヒットしない。

ということは、
このテーマは市場にニーズがないのか、
もしくは、誰も書こうとしないのか?

私は、後者だと考えた。

そもそも営業というのは感覚的なもので、
論理的に教えられるものではないというイメージが強い。

会社に入ってからそこで初めて教わるものだと思われている。

だから学校の授業でも教わらない。

だとしたら、論理的に解説する本を出せばいい。

そうして企画書を書いて懇意の編集者に見せたところ、
一発OKをもらった。

ちなみに企画書はボツになることもたくさんある。

私のパソコンの中には、そんな過去の企画書がたくさん眠っている。

OKが出たら、今度は執筆がはじまる。

私の書き方は、まず類書を取り寄せて読むことからスタートする。

似たようなテーマの本を一通り読むことで、
内容がかぶらないようにするのと同時に、
既存本より上をいくにはどうするかを考える。

「なんか他の本と似てるね」と言われたくないのだ。

まあその辺はプロ意識というのが働く。

そうして自分の独自性や方向性を決める。

この時点で、
すでに企画書で出している目次案に手を加えることもある。

さてその次は、実際にどう書き始めるか。

ここからは我流なのだが、
各章ごとにA4用紙を用意する。

そして、中央に章のタイトルを書く。

章のタイトルのまわりには、
時計回りにぐるりと節見出しを書いていく。

マインドマップの要領だ。

1枚の紙でひとつの章にする。

次に、各節見出しの下に、
その具体的な内容のキーワードを書いていく。
どんな流れで、どんな事例を使って、どう結論付けるかなど。

つまりこの時点で、書く内容を決めてしまうのだ。

ここは時間を使ってじっくりと考える。

そうしないと、全体のバランスが崩れてしまったり、
同じことを言っている場面が出てきたりしてしまう。

すべての章をA4の紙に落とし込んでから、
実際にパソコンで書き始める。

この方法にしてからは、執筆時間が読めるようになった。

以前は、白紙の状態でパソコンに向かっていたのだが、
そうすると、すぐに行き詰って考え込むことが多かった。

ひとつの節で止まってしまうと、先に進めない。
作業がストップしてしまうのだ。

それが、全体像を先にイメージしておくことで、
停滞が避けられるようになった。

やはり考える作業は、紙とペンが自分には合っているようだ。

一冊の本はだいたい200~230ページくらい。

それを2ヶ月くらいで書いていく。

もちろんときどき研修や打ち合わせに出て行くこともあるので、
ずっと書いているものではない。

ある程度余裕のあるスケジュールだ。

そのあとは、編集チェック、校正、校閲、修正を経て、
ようやく手から離れる。

その間に、正式タイトルや、表紙デザインなどを決めていく。

ざっとこんな感じである。

そして、書いていると、
ときどき「気持ちいい」状態になることがある。

高校生の頃にイメージしていたものに近いかもしれない。