サイレントセールスブログ

目の前の人に売らない営業のススメ(2)

営業マンにとって大切な作業は、
お客さまの警戒心を取り除くことである。

「?」

と思う人もいるかもしれないが、
これは事実だ。

売れている営業マンほど、
それを実践している。

ただこの「警戒心を解く」部分というのは、
ヒアリング術やセールストークといった
見た目でわかりやすい作業ではない。

どちらかというと陰に隠れていて、
当人も無意識でやっていることも多い。

無意識でやっていることは人には教えにくいものだ。

だから、売れている営業の秘訣を当人に聞いても、
その部分が欠落してしまうのである。

とくに初めて会うお客さまに対して、
警戒されたままの状態では、
何をやっても通用しない。

どんなに素晴らしいトークで話しても、
どんなに鋭い質問を投げかけても、
相手は受け入れてくれない。

それは売りにつながらないムダな時間になる。

私はその「警戒心を解く」ために雑談しようと言っている。

ただ、例外もある。

たとえば、飛び込み営業で客先に行ったとき、
最初から雑談で入るのは難しい。

「こちらのビルは新しいですね、新築ですか?」

などと、知らない人がいきなりやってきて、
こんな質問をされても受け入れにくいだろう。

このように飛び込み営業の場合や、
相手が忙しいときなどでは、
雑談による警戒心を解く作業は不向きなのだ。

そこで、有効なのが「売らない営業」である。

相手の警戒心を解くだけでなく、
「この人の言うことは信用できそうだ」と
思ってもらうための秘策。

それこそが、あなたには売りませんよと伝えること。

お客さまが営業マンに心を許すタイミングがある。

それは、営業マンが営業っぽくない言動をしたときだ。

「今日は売りに来たのではありません」

「ムリに買う必要はありませんよ」

「使わないものを買ってもしょうがないですからね」

このようなセリフを言うと、
お客さまは意外に感じる。

この営業マンってちょっと変だな。
営業らしくないな。

そんな感覚になって、
少しずつ警戒心が消えはじめる。

なぜかというと、
強引に売り込まれる心配がなくなって、
ホッとするからだ。

お客さまはムリな売り込みをされたくないときは、
隙を作るまいと警戒して緊張している。

営業マンの言動をいちいち疑いながら、
裏を読もうと神経をとがらせている。

いらないものを強引に買わされたくない!

だまされて損をするのはいやだ!

そんな気持ちが働いている。

腹の探り合いというのは、
営業マンもそうだがお客さまも疲れるのだ。

それではまともな話などできるわけがない。

そんなときに、
「今日は売りに来たのではありません」
と営業が来たら、

「は?」
と意外に思うのと同時に、
「自分が損するわけではなさそうだな」
と少しホッとする。

同時に疑問がわく。

じゃあ何しに来たのだろう?

そこですかさずこのように言う。

「いま、光熱費が月に2000円ほど安くなる商品を扱っているのですが、
すべてのお宅で使えるものではないんです。
そこで、こうしてお伺いしているところですが、
もし、使えたらお得になるので確認だけでもしてみませんか?」

たとえば、こんな感じだ。

これだと、売り込みではなくて、
あなたにとって得になる可能性がある商品があるから、
試算だけしてみませんか、という話になる。

つまり、お客さまのメリットを主体にしているのだ。

その試算の結果、2000円節約できることがわかれば、
ムリに売り込む必要もなくなる。

「試算したところ、光熱費が月に2000円安くなりますが、
どうしますか?」

買うかどうかを確認するだけでいい。

リスクもないのなら、すんなり買ってくれるだろう。

もちろん、試算して節約にならない結果が出れば、
それを伝えて帰ってくればいい。

すべてのお宅に通用する商品などは稀である。

通用しないところに粘ってもしかたがない。

通用するところ、
つまりお客さまにメリットがあるケースを探す作業。
それが飛び込み営業の立ち位置である。

お客さまにメリットのある商品なら、
自然に買ってくれるものだ。

買ってくれないのは、
強引に売ろうとする営業マンの態度が理由である。

警戒した相手には売れない。

本来なら売れる商品でも売れなくなる。

だからこそ、警戒心を解くことが重要なのだ。

目の前の人に売らない営業スタイルというのは、
売らないことが目的ではなく、
警戒されないために行うもの。

警戒心を解いて、
素直な状態で聞いてもらえたうえで、
商品が必要だと相手が思えば「買う」と言ってくれる。

それで商談は成立だ。

営業というのは、じつのところ「リサーチ」が主な作業になる。

これを私はリサーチ型営業と呼んでいる。

このスタイルに徹すると、
どんな営業でも冷たく断られないで済むし、
ストレスがなくなる。

もちろん、売れるときもスムーズになる。

そんな営業をぜひ目指してほしい!