以前、私はデザイン制作の仕事をやっていた。
MacでのDTPが始まった頃からなので、
かなり以前から手掛けていた。
当時は機材がとても高価で、
外付けのハードディスク500MBで10万円くらいだった。
(ギガバイトじゃないよ)
今は信じられないくらい安くなっている。
そのときの主な仕事は、
雑誌や本のデザイン、レイアウトだ。
出版社で新しい本を出すときに、
表紙(装丁)と本文レイアウトデザインを行う。
たまに組版もやっていた。
デザインの仕事というのは、
たいていがゼロから新しいものを生み出す作業だ。
もちろん、技術や知識や経験は自分のなかに貯まっていくが、
デザインとして生み出されたものは、その場限りになる。
なので、受注して制作して納品して代金をもらっておしまい。
その繰り返しで生計が成り立っている。
なので、
もし発注先からぱったりと仕事が来なくなったら、
収入源がなくなることになる。
実際に、そういうこともあった。
一方で、いま私がやっていることのひとつに本の執筆がある。
じつは、いま次の本の最終段階まで来ていて、
年内には出る予定だ。
この執筆作業は、一度著者から手が離れて仕事が終わっても、
そのあと増刷になるたびに印税が入ってくるしくみだ。
現在は、電子書籍化も同時にするので、
リアルの本とは別に、電子版での購入実績がカウントされて、
それも印税として年に数回入ってくる。
つまり、一度仕事を終えてもまだ入金がある(可能性がある)のだ。
このように著作権が発生するものには、
作業後にも恩恵がある。
その意味でいうと、
デザインというのも著作物だと思うのだが、
その権利はほとんどのデザイナーにはないようだ。
そしてここからが本題だが、
同じ作業をするのなら、一度きりでおしまいではなくて、
後々まで効果を発揮するものを残したほうがいい。
とくにいまサーバーやクラウドにどんどん蓄積できる。
昔のように、不要なデータを削除して、
空き容量を増やしながら作業する必要もない。
ネットワーク上にデータを残すと通信の妨げになるというのは、
もはや過去の話だ。
YouTubeのように動画データを
気兼ねなくどんどんアップできる時代になった。
そう蓄積できるのである。
たとえば、このメルマガもそうだ。
今回で767号なので、それだけの情報量が蓄積されている。
もちろん二次利用も可能だ。
過去のものをまとめて本にするなんてこともできる。
(やらないけど)
ちなみに、私が書いた『左利きの人々』もメルマガを書きためたものを、
出版社に提案したのがきっかけだ。
たまたまその編集者が左利きだったというのもあって、
出版が決まった。
蓄積していくと、情報量が増えるのもそうだが、
パワーが生まれる。
説得力が出るのだ。
ツイッターのフォロワー数なども、ひとつの説得力になる。
こうして情報やデータを蓄積しやすい環境ができている。
これを使わない手はない。
べつにすぐにビジネスにならなくてもいいし、
儲けにすらならなくていい。
自分の好きなことを、続けていて楽しくなることを、
コツコツを蓄積していくこと。
そして続けること。
それがいつしか大きなパワーになってくる。
そもそも左利きのメルマガは100%趣味で書いていたから、
ネタ探しも楽しくできていた。
本にしようなんて思ってもいなかった。
それが、実際に本になって、
数年後には「マツコの知らない世界」に出るきっかけになるとは!
ひとつのことをコツコツ貯める。
それがある一定量を超えると専門家として見られるようになる。
仕事に直結していなくてもいい。
定年になっても続けられるものをひとつ持っている。
これだけで生き方が違ってくるはずだ。