最近、営業セミナーを行うと、
必ずと言っていいほど年配の人が来ている。
役職を聞くと、社長とか営業部長などだ。
少し会話をすればわかるが、
営業で売れずに困っている感じではない。
「どうして参加されたんですか?」
と聞くと、決まってこんな返事がくる。
「部下への指導方法を知りたくて」
ちなみに、私のセミナーは基本的に営業マンが対象だ。
売れずに悩んでいる人向けに、行っている。
上司よりも部下に向けた内容になっているのだ。
ところが、営業の教え方を知りたいという人がやってくる。
それが増えてきているのだ。
じつは、セミナーの中ではときどき上司の視点で話すことがあった。
もし、あなたが将来上司になって部下を指導するときに、
こうしたらいいよというアドバイスだ。
人に教えるという意識を持つことで、
より深く理解してもらおうという意図である。
そう、実際に、私のセミナーは、
営業の教え方にも通じる内容になっていたのだ。
私のセミナーを受講後に、
社内で部下を教える講師になっている人も何人も知っている。
ということは、自身の営業だけでなく、
部下を指導するときにも使える内容だったと、
あらためて気づかされた。
まあ確かに、人を教えたり導くようなことは、
まったくやってこなかったし、苦手としていた私でも、
わりと簡単にできているので、
このやり方は、教えるときにも使えるのだろう。
よくよく考えてみると、
学校で営業の仕方を習ったことなどなかったし、
そもそもそんな授業すらなかった。
教えたり教わったりするものではないと思われているのだろう。
社会人になって、
会社の上司に教わりなさいというのが、
現実の姿だ。
その上司でさえ、
教え方など習ってきていない。
これまた、上から習ったことを踏襲して、
下に伝えているだけの場合がほとんどだ。
これまではそれでも通用していた。
しかし、今の時代、そしてこれからの時代には、
通用しなくなっている。
営業をとりまく時代や環境が大きく変わったからだ。
すると、これまでやってきた教育法ではムリが出てくる。
言われた通りにやっている部下も、
お客さまに通用しないことに気づく。
当然、売上も振るわなくなり、
上司も悩むことになる。
あらためて営業を教えようと思っても、
その下地になるものがないことに気づく。
売れない部下はもちろんだが、
上司もそれ以上に悩んでいたのだ。
ということで、
今回は営業の教え方についてお話ししたい。
といっても私自身も、
営業の教え方について学んできたわけではなく、
あくまでも我流だ。
ただ、私としては、
一見売れそうもない人でも売れるためにはどうしたらいいのかを、
ずっと考えてきたところもあるので、
教え方として通用する範囲が広いのかなと思っている。
また、気合いとか根性で売るというのが嫌いで、
理論的に説明できる売り方を心がけてきたというのも、
教えやすい要素だろう。
根性論で指導するときに必要なのは、
なんといっても実績だ。
自分が売れていたという実績があるから、
「俺はこうやって頑張って売れていた。
だからお前も頑張れ」
そこには、説得力がある。
(ただまあ、それが通用しなくなっている)
つまり、実績がない上司では、
部下を納得させづらいのだ。
その点で、私の教え方は、
すべてを理屈で説明できるので、
(あ、すべてというのは言いすぎだった)
極端な話、営業経験がなくても教えることができる。
私自身も人に伝えるときに不安なのだ。
その不安を消してくれるのが理屈である。
なぜ、最初に雑談が必要なのか?
なぜ、お客さまは本音を言ってくれないのか?
なぜ、こんなに良い商品が売れないのか?
なぜ、同じセリフを使っているのにあの人だけ売れるのか?
なぜ、お客さまに冷たくされるのか?
そんな疑問にきちん論理的に答えられるかどうか。
それが営業を教えるということだと考えている。
なので、すべてをこのメルマガ上で書き切ることはできないが、
大まかなコツを解説していきたい。
まず、精神論やモチベーションに頼るような指導をやめること。
気合いだけで売れたら苦労はしない。
それに、精神論というのは、営業マン自身にフォーカスしたものだ。
営業マンがどんなに売りたいと願っていても、
買い手の同意がなければ商売は成り立たない。
気合を入れて客先に訪問しても、
警戒されて断られるだけだ。
(まあ、なかには気合いが入っているのを気に入ってくれる人もいるが)
そんな人に当たることはまずない。
営業マンが頑張って売ろうとする意志を見せるほど、
お客さまに避けられる。
売れないのは頑張りが足りないからというのは、
営業マン側の勝手な言い分に過ぎないのだ。
それは、売れない理由を説明できないことの裏返しである。
売れないのにはきちんとした理由がある。
そして売れるのにも理由がある。
たまたまとか、運が良かったとか、ラッキーなどは理由にならない。
よくサッカーのインタビューで、
ゴールシーンを振り返ってくださいと聞かれて、
「たまたまいいボールが来たので当てるだけでした」
などと答えているシーンがある。
でも、ゴールにたまたまはないだろうと思うのだ。
そこまでのプロセスをきちんとやっていたから、
そのタイミングでゴール前にいることができて、
あとは当てるだけで済むポジションに立てたのだろう。
選手が本当に「たまたま」だと思っていたら、
それは心配だ。
営業は、売れなかったときに反省して振り返ったりするが、
売れたときは、何も考えないことが多い。
とにかく売れたんだからOKとしてしまう。
それはじつは危険なことだ。
売れたときこそ、売れた理由をきちんと振り返ることが大切である。
少なくとも、
気合いを入れたから売れたとか、
頑張ったから売れたなどと思ってはいけない。
頑張ったのかもしれないが、
売れた理由はそこではない。
それをきちんと理解することができたら、
コンスタントに売れる営業になれる。
なぜ売れたのかがわからないままだと、
成績に波ができて、スランプとかになってしまう。
本当に売り方を理解して売れている人というのは、
スランプなどにはならないものだ。
そうして売れた理由をきちんと解明しようとすることが、
営業を教える第一歩であると考えている。
「がんばれ」「根性を出せ」「気合いを入れろ」
などというのは、教えでもなんでもない。
単に営業マン個人の力量に任ているだけで、
いわば教える側の怠慢だと自覚していい。
と厳しいことを言ったところで、次回につづく。