サイレントセールスブログ

「申し訳ない気持ち」を消すには

先日、「価格交渉」というテーマで講演をした。

正直に言って、このテーマで話をしたのは初めてだ。

というのも、私がいつも話している論法は、

いかに信頼関係を作るかが主体だからだ。

価格交渉というのは、
どちらかというと駆け引きの要素が強く、
信頼というよりは腹の探り合いに近い印象がある。

私自身も、営業をしているときに、
相手の顔色をうかがいながらというのは、
とても違和感があった。

だまし合いをしているようで、
心がチクチクしていたのだ。

で、講演内容をどうしたものかと考えた。

そこで、私はちょっと冒険をしようと思い立った。

このテーマを見て参加する人は、
おそらくこんなことをイメージしていると想像する。

・「値引きしてよ」と言われたときの対処法

・「消費税分まけてよ」にどう切り返すか

・高額商品をどう売るか

これにストレートに答えるのは、まあ普通だ。

相手のイメージ以上のものを提供するにはどうするか?

そう考えた私は、内容を大きく変えた。

結果的に、値引きへの対処の話は一切しなかった。

どうしたか。

「そもそも価格交渉にならないようにするには」という話をしたのだ。

価格交渉というのは、営業に不利である。

いくらまで値引きができるかというものなので、
こちらが儲かる話ではない。

そうならないようにするにはどうすべきかというと、
やはり信頼関係を築くことに限る。

ということで、わりと普段通りの講演内容になった。

今回とりあげたのは「裏ニーズ」の話。

値引き要請をされても、裏ニーズで切り返す。

だってそもそも、安く買うことが目的ではなくて、
その商品を手に入れて、大きな利益をあげることが目的なはず。

そもそもの目的にシフトすることで、
小さな値引きなど眼中にないという状態にもっていく。

私がかつてリクルートで、
高額の広告を定価で売っていたときも同じことをやっていた。

そうすることで、結果として値引き交渉にならずに済む。

講演後の懇親会で、私は参加者に聞いてみた。

テーマと内容が違うことに違和感があったかどうか?

すると、聞いたすべての人が、大いに納得したと答えてくれた。

これは営業場面にも言えることだが、
相手の期待値を越えたときに、はじめて感動が生まれる。

良い意味で、いかに相手の期待を裏切るか。

それを意識するといい。

今回のメルマガのテーマである、申し訳ない気持ちについても同じだ。

どうして、営業はお客さまに対して申し訳ない気持ちになるのか?

それは根底に、

・こんな高額な商品を買ってもらうのは申し訳ない

・自分でも高いと思っている

・だから少しでも値引きをしてあげたい

このようなものがあるからだ。

自分の扱う商品が「高い」と思っていたら、
定価で売ることは難しくなる。

これも裏ニーズで解決できる。

10万円する健康器具を売るとしよう。

衝動買いはしづらい金額だ。

人によっては、一ヶ月の生活費がまるまる飛んでしまう。

だから売り手も高いと感じがちだ。

しかしその器具は、

とくにひざが痛い人には有効な商品で、
それを使うことによって、気持ちよく歩けるようになる。

ひざが痛いと、歩きにくい。

本当はもっと運動をしたほうがいいとわかっていても、
歩かないようになってしまう。

旅行に誘われても断ってしまい、
人づきあいも悪くなる。

痛みを抱えて寂しく暮らすことになる。

それはツライ。

そこまで考えると、その器具は、

「友人と楽しく旅行に行くためのもの」という考え方ができるのだ。

買い手が本当に求めているもの(裏ニーズ)は、
10万円もする健康器具を家に置きたいことではない。

・友人と気兼ねなく旅行に行けるために

・からだの痛みを気にせず生活できるために

・病院やマッサージなどから解放されるために

これらを手に入れるために、10万円は高いか安いか?

人によっては、すでに治療にそれ以上の金額を払っているだろう。

そこまでイメージして、これは安い!と感じる人に売ればいい。

営業マンの主観で高いか安いかではないのだ。

その商品を必要としない人には高いものでも、
必要とする人にとってはものすごく安いものになる。

だから営業の仕事は、すべての人に売ろうとすることではなく、
「この商品は安いね!」と思ってくれる人を探すことなのだ。

そうすれば、高くて申し訳ない、なんて気持ちは消えてしまう。

堂々と、自信を持って、定価で売ることができる。

あなたの商品の裏ニーズは何ですか?

それを欲しがっている人はどこにいますか?

それを考えるのが営業である。