先日、個人コンサルをしたときのこと。
話題が場の空気の話になった。
その人は、いつも緊張してうまく説明できなくなるらしい。
詳しく聞くと、
上司と一緒に客先に行くと、
まずその上司が先方と雑談を始める。
和やかな雰囲気になる。
じゃあそろそろということで、
その人が説明をする順番になるのだが、
そこで場の空気が一気に重くなってしまうらしい。
どうやら自分がちゃんと説明することで頭がいっぱいで、
上司とお客さまとの雑談も耳に入っていなかった。
会話が途切れて、
「では詳しくご説明させていただきます」
と言って話し出すと、場の空気が一変してしまう。
せっかく場の空気が和らいでいたのに、
それを自ら壊してしまっていたのだ。
でもまあ状況はよくわかる。
上司の前でヘタなことはできない。
そこで緊張してしまうのもよくあることだ。
ではそんなときどうすればいいのか?
まず、お客さまは上司とだけしゃべっている。
意識のベクトルがこちらには向いていない。
いわば、空気が自分以外のところでできている状態だ。
そこにいきなり割り込んでも空気を壊すだけある。
だからまずは自分とお客さまとの空気を作る必要があるのだ。
それには、説明の前にいくつかの会話を心がける。
「あとは担当の者に説明させます」
とこちらに話を振られたら、
すぐに説明を始めるのではなく、
「ではご説明させていただきますが、
その前にひとつだけ確認させてください。
○○に関してはすでにご存じということでよろしいでしょうか?」
このように、質問を投げかけることから始める。
質問すれば相手は答えてくれる。
そこに会話が生まれる。
すると、自分とお客さまとの間に空気ができるのだ。
このひとことを入れるだけで、
その後の説明がスムーズになる。
説明の前に、質問して答えてもらうことを心がけよう。
そしてもうひとつ。
こちらはちょっと高度なテクニックになる。
上司とお客さまとの雑談の内容を引き継ぐようにすること。
たとえば、先日ふたりで飲みに行ったときの話をしていたとしたら、
「今度はぜひ私も一緒に連れて行ってください!」
など、ふたりの会話を使うようにする。
そうすることで、一連の流れができて、
スムーズに会話の輪に入ることができる。
お客さまの視線をこちらにも向けさせるのだ。
もちろんそのためには、ふたりの会話を注意深く聞いていなければならない。
次に自分が説明する内容ばかりを考えていると、
人の会話が耳に入らなくなるので、
集中して聞く姿勢が必要になってくる。
スピーチのうまい人を観察すると、
同じことをやっていることが多い。
前の人の話を冒頭で使ってから自分の話に入っている。
ある意味で、前の人が作った空気を利用しているのだ。
これを最初にやるだけで、
・相手が聞きやすい雰囲気になるのはもちろんのこと
・アドリブで応用が効くと思われて
・(人の話を聞く余裕があるので)落ち着いていると感じてくれる。
評価も上がるというわけだ。
これが雑談力である。
なにも面白い話ができることではない。
話術に長けていなくてもいいのだ。
口下手でもその場の空気を作ることはできる。
営業が失敗しているケースは、
この空気感をうまく作れていないことが多い。
ぜひこの点を意識して商談に臨んでみることをお勧めしたい。