サイレントセールスブログ

営業の教え方にはコツがある(3)

でも、無意識領域なので、
その重要性を自覚していないし人にも伝えられない。

そこが一流プレイヤーが必ずしもよい指導者になれない理由だ。

つまり、売れている人が無意識で行っていることを、
きちんと理解できれば、よい指導ができるということになる。

というところの続きから。

小学生の頃、クラスには、
人気者でいつもまわりを笑わせている子がいる。

私はそんな子を見て、
いつもうらやましく思っていた。

どうしたらあんな風に面白く話ができるんだろう?

とても自分にはできない。

そう思っていた。

あるとき、そんな人気者の彼と一緒に下校することがあった。

同じ道を歩いて同じ風景を見ている。

すると、ある変わった光景に出会った。

自転車に乗ったおばさん同士が口ゲンカをしていたのだ。

お互いに相手が悪いとののしりあっている。

私たちはその人たちを横目に通り過ぎた。

「なんかすごかったねえ」

「そうだねえ」

そんなことを言いながらそれぞれの家に帰った。

翌日、学校に行くと、
人気者の彼はまわりの子を集めてそのときの話をし始めた。

それがまた面白いのだ。

おばさんの表情などもマネしながら、
みんなの笑いを取っていた。

そんな彼もとても楽しそうだった。

そのとき私は思ったのだ。

彼と自分との違いを。

彼は、おばさん同士のケンカを見たとき、
この話を明日みんなに伝えようと思っていた。

でも私は、単に「すごかったなあ」で終わっていた。

この違いは大きい。

同じものを見ているにも関わらず、
それをアウトプットすることを前提にしているかどうかで
大きな違いが出ていたのだ。

さらに彼は、
自分が面白い話をすることでみんなが笑ってくれるのが
とても気持ちがいいことだと知っていた。

だから、なおさら面白い話をしようと心がける。

その点、私はその気持ちよさすら知らなかった。

だから、ことさらにアウトプットする意識もなかったのだ。

そんな小学生が大人になって社会人になっていく。

一方は、常に自分の話し方を磨いていて、
どうすれば相手に聞いてもらえるのかとか、
どうしたらウケるのかなどを、
日夜意識しながら過ごしていた。

しかしもう一方は(つまり私は)、
そんなことは意識もせずに、
いやむしろ人と話すことを避けながら生きてきた。

これはもう、
常にからだを鍛えているアスリートと凡人の違いでもある。

話がうまい人というのは、
天性のセンスがあるのではない。

子供の頃からの鍛錬のたまものなのだ。

最初は試行錯誤を繰り返して、
成功と失敗を何度もして、
それでもウケたときの喜びを求めながら、
その境地にたどり着いている。

そして最後にはさほど意識しなくても、
自然に面白い話ができるようになっていた。

相手の顔色から、
そのときの気持ちを瞬時に察知することもできる。

でもそれは天才だからではなく、
長年培ってきたものだからだ。

そうなると、
当人にとっては簡単で、
それこそ無意識のうちにできるところまできている。

自分でもなんでうまくできているのか説明できない状態だ。

社会人になった時点で、
いとも簡単に営業でアイスブレイクができてしまう人と、
なかなかうまくできずに悩んでいる人の差である。

しかし、私のようなもともとできなかった人にも利点はある。

もともとできる人が自覚していない部分を知ることで、
より精度の高いアクションができるからだ。

どうしてうまくいっているのかわからない状態でやるのと、
うまくいく原則がわかってやるのとでは、
成功確率は違ってくる。

もともと自然にできてしまうのと、
できないところからできる状態になるのとでは、
「できる」ことに関する意識が違うのだ。

なぜ、うまくいくかの理由が見えるので、
失敗しそうになっても修正が効く。

結果として、
無意識でうまくできている人と肩を並べる、
いやそれ以上のパフォーマンスが可能なのだ。

営業を教えるときに、
トークやテクニックなどの目に見えるものを教えるのは、
まあ当たり前のことだ。

教えやすさもある。

しかしそれだけでは営業マンは育たない。

もっと目に見えない部分である、
売れる営業マンの無意識領域までを教えることで、
誰でも売れる人に変えることができるのだ。

昨日もある人と話をしていたが、

「相手と話をしていると勘所がわかるんだよね」

と言っていた。

天才型によくあることだ。

じゃあどうやって勘所を見つけるかについては、
自分では説明できないとも言っていた。

つまりそれが説明できれば、
売れる営業マンを育てることもできるというわけである。

次回はそんな、営業の目に見えないマインドの部分に
焦点を当てていく。