言わなきゃいけないけど、なかなか言い出せない。
営業の場面ではときどきそんな瞬間がやってくる。
なかでも多いのが、料金の話。
とくに、お客さまと話が盛り上がって、
商品への興味も高まっていて、
いい雰囲気になっているとき。
この感じなら決まる!
そう確信しつつあるときに、
「ここで、お金の話をして気分を台無しにしたらどうしよう」
そんなことを考えてしまいがちだ。
また、相手が商品の良さを感じていて、
使いたい意欲が高いときというのは、
なかなかお客さま側から「いくら?」というセリフが出ないものだ。
買いたい気持ちを言ってしまったら、
高く買わされるかもしれないと思ってしまうのか、
言いづらかったりする。
だが、もちろん、気になっている部分であり、
買いたい気持ちが決まったら次に一番知りたいことだ。
お互いにそろそろ「料金」の話題にしたいと思っている。
でも、なかなか切り出せない。
どちらが先に言い出すか、ふたりで待っている。
で、そんな状態のまま、
仕事がスタートしてしまうこともたまにあるのだ。
お互いにこのくらいの金額だろうと目算を立ててはじめるのだが、
そんなときに限って、途中で金額があわないことに気づく。
私もデザイン会社をやっていた頃は、
たまにやってしまっていた。
デザインの仕事というのは、
多くの場合、毎回カタチが違ってくるので、
その都度金額が変わる。
それを決めずにスタートしてしまうと、
齟齬(そご)が起きやすくなる。
こちら側としては、
いつもより手間がかかっているから、割増料金でいこうと思っていても、
相手は、前と同じ金額だろうと考えていたりする。
そうなると、せっかくいい雰囲気で話が進んで、
仕事も順調に動いていたのに、
水を差すことになってしまう。
ときには険悪な関係にまでなって、
その後の付き合いが切れてしまうことにもなりかねない。
それは避けたい。
私がいまやっている研修の仕事も、
実際にはその都度料金が変わってくるものだ。
相手の予算であったり、
時間の長短や、内容の変更など、
いろんな要素が入るので、
一応、目安の金額は提示してはいるが、
ある意味で、「応相談」となっている。
そんなときどうするか。
私の場合は、
内容の話がある程度固まったくらいのタイミングで、
料金の話を切り出すことにしている。
「あとは、金額ですね」
「そうですね」
「予算みたいなものはあるんですか?」
「ある程度はありますけど・・・その都度ですね」
「ちなみに他の講師の方はどれくらいでやってるんですか?」
「多少前後しますけど、だいたい〇〇円くらいですね」
こんなやりとりをすることが多い。
相手の相場観をさぐりながら併せて行く感じだ。
こうすると、よほどの差が無いかぎり、
お互いに納得できる金額になる。
また、先に目安の金額を提示することもある。
「ちなみに料金の話ですけど」
「そうですね、どんなものなんでしょう?」
「一応〇〇円でやっています」
「なるほど、それなら大丈夫です」
「あとは、事前の打ち合わせの回数や内容のカスタマイズの度合いによって、
上限で〇〇円くらいの感じですが、どうでしょう?」
「OKです。それでよろしくお願いします」
こんな感じで、こちらから提示する場合には、
金額に幅を持たせて伝えるようにしている。
そうしておかないと、
あとであれもこれもと追加が来たときに困るからだ。
またお客さま側としても予算の範囲がわかるので、
安心できる。
そして、大切なのは、金額を言うときの気持ちだ。
自分の中で「高いかな」と思っていると、
それが態度に出てしまう。
どうしても、申し訳なさそうな言い方になりがちなのだ。
私も、最初の頃はそうだった。
2時間しゃべるだけで、こんな金額を取っていいのだろうか。
などと思いながら、恐る恐る料金を提示したこともある。
でも、今は違う。
自分の価値を自分の中で見極めているつもりなので、
この金額ではむしろ安いと思いながらやっている。
言い換えれば、料金以上のものを提供しているつもりでいる。
なので、自信を持って言えるのだ。
営業マンが料金の話を切り出しにくいと感じているのは、
自分の商品が「高い」と思っているからである。
そんなときは比べる対象を変えてみることだ。
ライバル会社のものと比べていると、
いつまで経っても料金の縛りから逃げられない。
商品の本質をもっと掘り下げることで、
真の価値が見えてくる。
例えば私の場合、
この研修に参加する前の営業マンの売上が、ゼロだったとする。
その人が、売れるように変わったとしたら、
年間どれくらいの利益を生むだろうか?
そして、ずっと売れ続けたらどうなるか?
そんなことをイメージしている。
そう考えていくと、「安い!安すぎる!」ということになるのだ。
(まあ、私としてはとくに社員もいないし、経費もそれほどかからないので、
適正価格だと思っている)
そこには、2時間でどうのとか、4時間だからどうだという感覚はない。
自分の研修がもたらす結果だけをイメージして、
そこに価値を見出している。
どんな商品やサービスも同じだ。
むかし携帯電話が出始めたころは、
20万円とかの金額だった。
これを単なる機械ととらえると、
部品代でいくらかかって、流通コストがどうのこうの・・・
という計算になりがちである。
でも、コミュニケーションツールととらえると、
価値が変わってくる。
もし、大事な電話がかかってきたときに、
すぐに対応できなかったら。
その電話は大口の仕事の依頼だったら・・・。
大事な仕事を逃さないためなら、
携帯電話を持ったほうが得だ、となる。
するとその価値は、電話料金の何倍にもなったりする。
それが真の価値である。
自分の扱っている商品は、
お客さまが買った後にどれくらいの価値を生んでいるのか。
それがないとお客さまはどれくらい損をするのか。
そこを明確にしておけば、
料金の話は恐くなくなる。
むしろ堂々と自信を持って言えるようになる。
そう考えると、
世の中にある商品のほとんどは、安いのだ!
もちろんあなたの商品も!